ワンパンマンのカタルシスについての個人的纏め

1巻

 

第一話:えらい崇高な思いで人間を滅ぼそうとしてきた怪物をワンパンで倒す

→笑えるくらいのあっけなさ

 

第二話:就活に失敗し死んだ目をしていた(まだ人間だったころの)主人公がヒーローに目覚め、怪物に襲われる少年を倒す。

→男ならだれしもが憧れるヒーローになれた、という快感

○子どもを助ける→外面

○憧れのヒーローになることを決心→内側

つまり、カタルシスを産むには主人公(ひいては読者)の外面と内面両方を満たさなければならない。

 

 

第四話:無敵だと思われていた主人公が苦戦する

「俺は負けない! 俺が地球を守る!」(血に塗れながら昂奮した面持ちで)

「(何だこの気持ちは……この胸の高鳴りは!)」

「(このピンチ この緊張感は! 久しく忘れていたこの戦いの高揚感は)」

夢でした

○夢落ちで笑いをとりつつ、主人公の無念さを表現する

 

 

第五、六話:真剣に戦っているところをコンビニ行ってくる感覚でやってきた主人公がやはりワンパンで倒す。また、死直前にまで追い込まれたジェノス(凄い強そうないヒーロー)を助け、尊敬される。

→仲間の窮地を助けるのをたった一話分で達成するのでストレスがない。

 

第七話

長々しく身の上話をするジェノスに「20行でまとめろ」と吠える

→圧倒的に強そうなヒーローを手懐けた(支配欲、とは少し違うかもしれないが似たようなイメージ?)

○強そうな仲間に慕われる理由がはっきりしている

 

第八話

怪獣に襲われても平然と構える。そしてやはりワンパンで倒す

→「(弱そうに見える主人公に向かって)立場を分からせてやる」からの瞬殺

 

 

第九話

圧倒的な知力で世界中に【貢献】←当然見返りが欲しいところ

しかし彼は世界に失望した

彼の思想である「人工的進化」に誰も強力しなかった←見返りがないのはかわいそうだけれども彼の思想は悪そのものである

幼少の頃から彼は人間の能力の低さに疑問を抱いていた←中二心を擽られる言葉

自分以外の人間が頭の悪い人間にしか思えなかった←なら悪の思想に染まるのも納得できる

○これを漫画で4Pに纏めるというテンポの速さとわかりやすさ

 

それを聞いて主人公はすぐにやっつけに行く。しかもその理由が特売日のため。

→割としょうもない理由でとんでもないことをやりにいくくという倒錯的な面白さ

 

 

第十話

例のちょう強い敵が主人公に【恐怖】し、「どうやってその力を手に入れたのか」と聞く

→ちょう強い敵が主人公(読者)に怯えるという快感

 

 

おまけ

はげ頭になるまえの話。トレーニングに勤しむ主人公が敵に襲われ、突然の不調により苦戦するが、わりと本当にしょうもない理由でその不調が癒えてワンパンで敵を倒す。

→苦戦しても虫歯がとれただけで倒せてしまったという快感と、磨き続けるという教訓を示す。

 

 

第16話

なんか凄そうな団体、権威がありそうな団体(ヒーロー協会)がくそまじめに話しているところを主人公はだらしない格好で聞く

→全校集会の校長の話なんて誰も聞きたくない、という発想により、『真面目にそして偉そうに講釈する輩を全力で馬鹿にしていく姿勢』が快感

 

なおかつ主人公の成績を不当に評価しようとする「新人潰し」をやはりワンパンで倒す

→クソみたいな人事をぶっ倒すという快感

→従来より「上司はクソ」みたいな風潮が世間一般にあるように思える。基本的に目上の人にはケンカを売って行く姿勢のほうがいいかもしれない。特に「自分の名誉のために不当な評価を下す」のような人間に。この「」の部分を如何に上手く敵キャラに染み込ませていくかというのが、悪役の設定方法の大きなヒントになる。

 

第十七話

ジェノスの全力の攻撃にあっさりと耐え、そしてジェノスをワンパンで倒す。が、ワンパンというのはただのチョップであり、さっさとうどんを食いに誘っている。

→圧倒的な強さを誇る主人公であれどむやみに人を傷つけるようなことはしない。そういう【強さゆえの余裕】の片鱗を見せている。

 

第二十話

ランクAのヒーローでも倒せない敵をワンパンで倒す

 

 

第二十七話

「勝てる勝てないじゃなくて ここで俺はお前に立ち向かわなくちゃならないんだ!」

→等身大なヒーローが立ち向かい、それを市民たちが涙を流しながら応援する

○そしてそのヒーローを主人公が颯爽と駆けつけ助け、やはりワンパンで敵を倒す。

 

第二十九話

皆から敵意を向けられる主人公に、一通の感謝の手紙を送る者がいた。それは先日助けたあの等身大のヒーローだった

→等身大のヒーローが主人公側につくことで、主人公と読者とのつながりが強くなった。

また、「彼にいいもずくを!」という粋な注文と、主人公が頼んだのはもずくという庶民さ(ワンパンで倒せるのに庶民的、というのが、粋なのだと思う)

第七巻のおまけ3

 

警察とヒーローの違いについて

警察「ヒーローはちやほやされてうぬぼれている」

警察「私たちだって命を掛けて人助けをしているのにこの差はなんだ」

ヒーロー協会が警察に刺客を送り、茶番劇を見せつけることで【ヒーロー協会>警察】を自演させようとする、がそれを主人公が阻止。

主人公「お願いされて動くものじゃない 警察もヒーローも」

→主人公が正論を言ってそしてやはり主人公が勝つ、しかも警察に恩を返す形で

○かつ丼の御礼、という【義理人情】が快感

 

 

第四十二話

派閥を作って主人公を妨害しようとするヒーローを倒す

→「派閥作り」は読者にとって毛嫌いするものである?

→学校とかの仲良しグループとかが凄い嫌い、みたいなイメージ。村上春樹の「沈黙」に出てくるクラスのリーダーを崇拝するクラスメートのような。

 

ジェノス「先生は誰とも組まない 誰とも対立していない ランキングなど見ていない」

→対立しようとするのは、自分は強いんだ、ということを相手に、世界に見せつけたいからという欲求、すなわち自己顕示欲によるもの。その【自己顕示力】が無い状態、無欲であることが主人公の魅力

○主人公には自己顕示力はいらない 

「だが不思議と強者を引き寄せる」

○自然と周りから集まってくる。しかも頼りがいのある強者が。それによって主人公の基盤は強固になる

「なぜなら強いから」

 

☆周りに媚びず、無欲である。そして、主人公の周りの人間関係は良好になっている。

その状態が一番ベスト。

皆だれしもがそうあってほしい。何をせずともありのままの自分でいることで人間関係がよくなってほしい(友達とか彼女とかが自然とよってくる)。

だけれども、そういう欲を主人公にもたせてはならない。主人公を魅力的に書いて、それでサブキャラが上手いことついて来てくれる。そういう環境づくりが必要。